研究概要 |
62年度、63年度において明らかとした、actin,calmodulin,calciumの局在の証明をふまえ、calcium結合性蛍光物質fura2を用い、Jeejeebhoyの変法に従って分離した肝細胞内のCa^<++>濃度分布を検討した。既に62年にcalcium antinonate法により電顕的に明らかにした初代培養肝細胞内のCa^<++>分離では、肝細胞膜周囲および毛細胆管周囲に豊富に認められ、毛細胆管周囲性マイクロフィラメントの分布とあわせ、毛細胆管の律動的収縮におけるcalcium-calmodulin actin系の作動が示唆された。更に、本年度、fura2を用い各種薬剤によるCa^<++>の細胞内濃度分布の変化を経時的かつ定量的に測定記録した。細胞内Ca^<++>濃度を上昇させるcalcium ionophoreは投与直後より細胞内Ca^<++>濃度を上昇させ4〜8秒後にプラト-に達する。細胞内分布では特に毛細胆管周囲のCa^<++>濃度の上昇が著しく、この時透過光下に同一肝細胞を観察すると、毛細胆管は収縮している。一方、actin重合阻害物質cytochalasinBを投与すると、透過光下の観察では毛細胆管は著しく拡張するが、fura2による蛍光強度の細胞内分布は変化を認めない。又、calmodulin antagonistであるW7投与により、毛細胆管は軽度拡張するがCa^<++>濃度は徐々に低下傾向を示した。 62年度、63年度PBC患者血清中抗intermediate filament(IF)抗体、抗actin filament(AF)抗体を検出するため、IFに富む継代培養株PtK_2、AFに富む_3T_3に対し蛍光抗体法を施し、PBC患者血清中抗IF抗体価が有意に高い。PtK_2よりcytokeratinを抽出し、immunoblot法を用いPBC患者血清中の抗cytokeratin抗体価を測定したところ、蛍光抗体法により測定した抗IF抗体価と同様の傾向を示した。即ち、病初期においては高力価を示し、病期の進行とともに低下する為、PBC病期診断に有用と考えられた。PBC病初期、無症候性PBCにおいても高力価であることから、胆管破壊との強い関連が示唆された。
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