研究概要 |
肝細胞癌 (HCC) 例の59%で血漿PIVKA-IIは陽性で肝硬変例では全例陰性を示し、PIVKA-IIはHCCに高い特異性がみられた。PIVKA-IIはAFPとは相関せずに有用と思われた。HCCではPIVKA-II値と腫瘍の大きさとに関連がみられた。また肝硬変例をfollowしてPIVKA-IIの上昇が契機となってHCCの発見につながった例とPIVKA-II高値のみがHCCの正診に結びついた例を数列づつ経験した。HCC例とvit・K欠乏例のPIVKA-IIは同じ半減期60hrを示し同じvit・K感受性を示した。従ってHCCの治療効果判定及び増大再発の早期発見にPIVKA-IIの半減期を考慮した減少率でfollowする事が有用と考えられた。huH-2を含む5種のヒト肝癌細胞株の培養上清中にPIVKA-IIが検出され、非肝癌細胞株上清中には検出されずvit・K添加にてPIVKA-II値は著減した。以上よりPIVKA-IIは肝癌細胞で産生されその産生はvit・Kの存在に左右される事が判明した。huH-2での検討では正常プロトロンビン産生に関与する3つの酵素K-epoxide-reductase,K-reductase (vit・K cycle) 及びγ-glutamyl-carboxylaseのすべてが働いている事が判明した。血漿PIVKA-II陽性HCC例の癌部のPIVKA-IIは高値を示し非癌部は低値を示した。PIVKA-II陰性HCCでは癌部非癌部共に低値を示した。プロトロビン関連抗原量F-IIはPIVKA-II陽性陰性HCC共に癌部が非癌部よりも高値の傾向がみられ、vit・K濃度はPIVKA-II陽性陰性HCCの血液・組織共に差はみられなかった。F-II染色ではPIVKA-II陽性HCCの癌部が陰性HCCに比べF-IIが多く染色され非癌部では陽性陰性で差はみられなかった。数例のPIVKA-II陽性HCC例の癌部でPIVKA-IIが陽性に染まった。HCCにおいてF-IIの産生亢進がおこり、これにより相対的なvit・K欠乏状態となりPIVKA-IIが出現してくるのではないかと考えられた。
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