抗炎症蛋白であるリポコルチンはグルココルチコイドの情報伝達物質として生成されホスホリパーゼA_2活性を阻害して抗炎症効果を発揮する。一方、アレルゲン吸入後数時間で発現する遅発性喘息反応(LAR)は慢性の難治性喘息と類似するのでその発現機序の解明が喘息治療の上で急務とされている。LARはコルチコステロイドの前投与で抑止されること、LAR発現時に血中コーチゾル値が低下することなどから、その発現とコルチコイド、リポコルチン系との関連が示唆される。本研究ではLARにおけるリポコルチンの関与を探るべく、ヒト胎盤からリポコルチンを分離精製し、それに対するモノクロナール抗体を作製しLAR中のリポコルチンの動態を探ること、およびLARに対するリポコルチン前投与の影響を観察することを試みた。1.リポコルチンの分離精製、ヒト胎盤からTris bufferで抽出し上清をDEカラム、ゲル濾過を行いホスホリパーゼ活性をもつ3mgのリポコルチンを得た。2.抗リポコルチンモノクロナール抗体の作製。免疫原をFCAとともにマウスに免疫しその脾細胞と骨髄腫細胞とを融合、ハイブリドーマ増殖をおこさせ抗体を産生せしめた。その結果、9種のクローンを得たがリポコルチン(分子量3.7万)と反応する抗体は得られずリポコルチン自体の抗原性に疑問が持たれた。3.モルモットLARに及ぼすリポコルチンの影響。リポコルチンの前投与により半数のLARが抑制された。又、低コーチゾル状態としたモルモットはその気道過敏性が増大するがリポコルチンはその増大を制御する傾向を示した。 以上の結果はLARの病態形成に低コーチゾル状態およびこれに引き続くリポコルチン活性の低下が関与することを示唆する。またLARの一部はホスホリパーゼ系の亢進による炎症反応の結果として発現しうることが想定された。
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