夏型過敏性肺臓炎の原因抗原ならびに発症機構を解明するために研究を行い、以下の結果を得た。 1.原因抗原に関する研究 夏型過敏性肺臓炎の原因抗原を明らかにする目的で、まず、患者の家庭から真菌を分離し、健常者家庭からのものと比較検討した。その結果、各患者の家庭から高頻度に分離され、かつ健常者家庭からは分離されなかった真菌は、トリコスポロン・クタネウムであることがわかった。そこで次にこれらのトルコスポロン・クタネウムに対して患者が感作されているか否かを知るために、各患者の血清中抗トリコスポロン・クタネウム抗体を測定したところ全例が陽性であった。また、トリコスポロン・クタネウムの培養濾液抗原を用いて行った吸入誘発試験も殆ど全例が陽性であった。すなわち、トリコスポロン・クタネウムは患者発症環境に存在し、患者を強く感作し、吸入誘発試験も陽性であった事から、夏型過敏性肺臓炎の原因抗原であることが実証できた。トリコスポロン・クタネウムによる過敏性肺臓炎はこれまで報告されておらず、新しい疾患であると言える。 2.発症機構に関する研究 夏型過敏性肺臓炎の発症機構を知るために、患者の住宅調査を行った。その結果、トリコスポロン・クタネウムは患者家庭の中でも湿気の多い場所にある腐木、畳、マット、インコの糞などに増殖していることがわかった。したがって、本症は発症環境の面からはsick-house syndromeの概念で捉えられるべきである。本症の発症には多因子が関与しているが、本症患者にHLA-DQw3の抗原を持つ人が多かったことから、遺伝的因子発症の1要因と考えられた。
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