研究概要 |
まず, 本学ME学教室に依頼して筋電図アンプを新たに製作したが, 高性能集積回路素子を輸入する必要があったため, 手持ちのアンプでも測定が可能な表面電極による実験を先行させた. この結果, 努力呼気時に被験者の半数に胸・腹筋活動の解離がみられ, 「横隔膜によって隔てられる両呼息筋は独立した機能単位として活動する」という予想を裏付けるものであった. さらに詳細な解析を行なうにあたり, 肋間筋筋電図は努力呼気時には体動による影響が大きく, 精度の限界があることがわかったため, 腹筋に対象を限定することとした. 新アンプと気道閉鎖システムは予定より遅れて10月に完成したが, このシステムを用いて努力呼出時に気道の一過性閉塞を行い, 外腹斜筋に留置した微小ワイヤー電極で筋肉活動の測定を行うと, 閉塞の直後に一過性の活動低下が繰り返し観察され, 努力呼出時に腹筋は胸腔内圧の変化に基ずく調節を受けていると推定された. 現在はこれらの結果を解析中であるが, この結果は第28回日本胸部疾 患学会総会で報告の予定である. 腹筋の特性を探る目的で, 別に動物実験をも平行させて行い, CO_2吸入や気道閉塞における腹筋の動員パターンに関する若干の知見を得たが, この結果は近くTohoku Journal of Experimental Medicineに公刊される予定である. 現在進行中の実験は, 筋肉活動の一過性低下の起源が気道内の受容器にあるか否かを検討するために, キシロカイン吸入により気道受容器のブロックを行なったうえで努力呼出を行なわせている. また, 技術的な問題として, 体動時の電極の移動に基づく筋電図の外乱をデジタルフィルターによって処理する方法を試みている.
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