研究概要 |
気道の過敏状態を誘起する機構を解明する目的で、気道の弛緩や収縮に強い影響力を有するアラキドン酸代謝の観点から検討した。昨年度に引き続き、気道の過敏状態の作成を今年度は硫酸エアロゾル吸入暴露する方法にて行い、3,2mg/m^3の硫酸により2週間暴露をすると気道が過敏になること、過敏状態では好酸球の浸潤などトロンボキサンを産生する細胞が増加していることが明らかになった。昨年度の結果からアナフィラキシ-反応後のトロンボキサンA_2の類縁体であるU46619に対する反応性が上昇すること、in vivoでの気道過敏(NO_2暴露により誘起)状態がトロンボキサン合成阻害剤により回復することが明らかになったことより、トロンボキサンの平滑筋におよぼす影響を検討した。収縮が起きる付近の濃度U46619共存下での、外から加えたアセチルコリンの収縮反応および電場刺激により放出されるアセチルコリンによる収縮反応を検討し、U46619はいずれの収縮反応に対しても有意な影響を与えないことが判明した。このことは、犬などで電場刺激によるコリナ-ジンクな収縮反応を亢進させる作用がU46619に存在するとの報告とは異なる結果である。また、プロスタグランジンE_2に関しても同様の実験を行いPGE_2も、いずれの収縮反応に対しても有意な影響を与えなかった。この結果も、これまで犬で行われコリナ-ジックな収縮反応を抑制するとの報告と異なっていた。一昨年度に行ったモルモットの自発性収縮の結果からモルモットは自発性収縮性があり、犬にはほとんどないことが臨界領域の化学伝達物資の他の収縮物資の収縮作用におよぼす影響を見る実験の結果に差異を生むことになり注意が必要なことが示唆された。 現在の状況でトロンボキサンがどのような機構でモルモットの気道過敏性の関与するかは不明であるが、今後検討が必要な点である。
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