幼若期における低蛋白食による長期飼育が正常な肺胞形成に形態学的、生理学的、生化学的にどのような影響を与えるかを知る目的で本研究を行った。離乳させた幼若ラット(生後3週間)に低蛋白食(カゼイン8%含有)を自由摂食とした。対照群では正常蛋白食(カゼイン20%含有)を与えた。栄養学的には実験群の方が摂取総カロリーの上では上回っていた。体重は屠殺時(7週齢)で実験群230%増、対照群273%増であった。実験群の血清蛋白は対照群に比して軽度の低下がみられた。乾燥肺重量は実験群で有意の低下がみとめられた。また同群の肺ではhydroxyproline、desmesineが有意に低下していた。肺の形態計測では実験群で平均肺胞壁間距離の有意の増加がみられた。肺胞道の幅には差がなかった。digitizerによって測定した平均肺胞径の分布は二峰性のパターンを示した。すなわち120〜140μmに分布するものと、40〜70μmに分布するものに分離された。肺胞数は80μm以下のものは両群間に差がなかったが80μm以上の肺胞は実験群が約45%増加していた。肺気腫の指標であるdestructive indexには差異がなかった。圧一量曲線は空気注入量曲線の肺容積は0-30cmH_2Oの肺静水圧で実験群が対照群より大きかった。これを%TLCで示すと中肺気量位で肺の弾性収縮力の低下がみられた。一方、生食注入圧一量曲線では両群間に差異はみとめられなかった。以上より形態学的には低蛋白食を与えることによって肺胞径の増大した肺胞が形成され、生化学的にはcollogen、elastin含有量の低下がみられた。肺弾性収縮力の低下は結合織成分の変化が、左上方へ偏移させるという効果に加えてswfuctantの質的、量的変化が、圧一量曲線を逆に右方へ偏移させた可能性がある。
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