1.単一運動単位活動電位の記録のための筋肉内電極の開発。 当初白金線電極、ついで双極針電極により、筋肉内の単一運動単位活動電位を記録することを試みたが、運動神経を2点で刺激した時に確実にどういつ運動単位電位を得ることが困難であった。 2.表面電極を用いた単一運動神経線維伝導速度測定法の開発。 本方法はわれわれが本研究のなかで新たに開発したもので、その原理は次のようである。抹消運動神経に対する刺激強度を僅かずつ増加させてゆくと、「全か無か」の法則に従って新しい運動単位が興奮し、それによる電位が順次付け加わってくる。特定の運動単位活動電位の出現後の波形から出現前の波形をコンピュータを用いて電気的に引き算をすることによってその運動単位活動電位を記録することができる。これを逐次減算法と名づけた。本法は運動単位の数が著しく減少した時および個々の運動単位活動電位が増大している時が最も良い適応である。このような病態として運動ニューロン疾患を選び、本検査を施行した。検査は正中神経について行い、拇指球より活動電位を記録した。運動ニューロン疾患患者9名の12本の正中神経から49個の運動単位電位を分離・同定できた。肘-手首間の各種運動神経線維の伝導速度は最低33.9m/sec、最高66.7m/sec、平均47.6m/secであった。これは正常人と比べて大きな変化はないと思われた。運動単位の振幅は22.8μVから2893.2μVまでの極めて広い範囲に分布していた。伝導速度と振幅との間に一定の関係は認められなかった。興奮の順序と伝導速度との間にも一定の関係はなかった。逐次減算法は、伝導速度、振幅、興奮の閾値など種々の機能的側面を総合的に評価できる優れた方法と思われた。
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