研究概要 |
当初予定の通り, 電気凝固器の購入によりラットにおいて中大脳動脈閉塞モデルの作成が可能になった. しかし, 田村らの原法では, 中大脳動脈閉塞のみでは一定した梗塞巣は作成できないことが判明した. そのため, 中大脳動脈閉塞に加えて, 同側の内頚動脈閉塞単独あるいは両側の内頚動脈を閉塞させて梗塞巣の範囲を検討した. 両側の内頚動脈閉塞を加えると3時間後には高率に虚血巣を中大脳動脈領域に作成できることがわかった. 虚血巣の判定には, TTC(triphenyl tetrazolium chrolide)のimmersion法を用いた. 水素クリアランス法による脳血流量測定を予定していたが, 脳深部の脳血流量も重要と考えられたので現在はC14-iodoantphyrineを用いたオートラジオグラフィー法を用いて検討している. 現在のところ, オートラジオグラフィー法により脳血流量イメージは作成可能となり, 定量性を検討している段階である. 虚血組織において, 免疫組織化学的手法を用いて種々の細胞骨格蛋白, 神経伝達物質などの染色を行っている. 従来行っていた, 免疫組織化学的方法は灌流した脳を用い, 凍結切片を溶液中に浮遊させるいわゆるfree-float法を用いていた. この方法では染色性は上昇するが, 虚血巣では灌流固定の程度が正常部位と異なるために染色性が低下する可能性がある. したがって, 凍結切片をスライドグラス上に貼付して染色する必要がある. この方法では, チュブリン, ニューロフィラメントの染色に際し, 従来の固定法では染色性が弱く, また切片自身も脆くなってしまった. 種々の固定法を試行し, 現在はチュブリン, ニューロフィラメントにおいては染色性が向上したが, 5HTなどではまだ不十分である. 現段階では小数例の検討であるが, ニューロフィラメントに関しては虚血早期においては, 染色性の低下はみられていない. 当初の予定より遅れているが, 今後与えられた機会を生かし, 検討を続けていく所存である.
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