研究概要 |
青斑核から導出した活動電位の放電頻度は, 脱血前2.4±1.71秒であったが脱血による血圧下降時3.2±2.21秒に増加した. また活動電位がおちついた後, 再び血液を再注入することにより血圧を上昇させた際には, 放電頻度は3.5±2.7/秒から2.7±1.9/秒と減少した. これらの変化はP<0.01, P<0.02にて有意な変化と考えられた. これらの放電頻度の変化を検討した後, 両側頚動脈を結〓することにより, 脳潅流圧を選択的に低下せしめた. 結〓前に放電頻度は3.4±2.3/秒であったが, 結〓後2.3±1.8/秒へと減少した(P<0.01). その後, (2分後)に再び結〓をほどくと, 放電頻度は2.9±1.8/秒から3.7±1.9/秒へと増加する傾向を認めた. 以上のように, 全身血圧変動時の放電頻度の変化は, 脱血時に増加し, 再注入時に減少を認めた. これに対し, 選択的に脳潅流圧のみを変化させた際には, 青斑核ニューロンの活動電位の放電頻度は, 減少を認めた. 今回の我々のエルジユイ電極作製にはマイクロホージなどを使用することによりかなり均一性のある電極を用いうることができ, ほとんど常に活動電位を導出しえた. また, 実験後, 電極の先端に逆電流を流すことにより電極中の鉄を流出せしめ, その部分を鉄染色法により, 正確に電極先端部の解剖学的部位を明らかにすることが可能であった. これらの青斑核の反応性に比して, 他の核での検討も, 予備時に開始した. まず室項核にての検討を行ったが, 脱血・再注入による血圧変動に対して, ほとんど明らかな変化は示さなかった. また頚動脈結〓による脳潅流圧変動時にも, 明らかな放電頻度の変化は認められなかった. 以上より, 青斑核ニューロンは脳潅流圧変動に対して何らかの反応を示していることが明らかとなった.
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