研究概要 |
我々の研究よりDuchenne筋ジストロフィ-症(DMD)の筋細胞膜異常の特徴は膜内粒子の減少特にorthogonal array(OA)の減少であることが判明した。OAは幼若な筋細胞膜には見られず、DMD生検筋細胞膜にみられるOAの減少は本症生検筋に混在する筋細胞変性後の再生筋線維によるものではないかという批判が存在する。この点を解明するため再生筋線維では筋細胞の内部の筋原線維の配列が不規則で細胞内部の様相から再生筋線維であることがわかるので、筋細胞膜と筋細胞の内部とが連続して3次元的に観察可能なquick freeze,deep etching,rotary shadow(QDR)法を用いてDMD筋とヒト正常骨格筋とを対象として筋細胞膜と細胞内部とを同時に観察し、DMD筋では再生筋細胞以外の筋細胞膜でもOAが存在しないことを確認するため本研究を実施した。6例の組織化学的に正常なヒト大腿四頭筋と3例のDMD患者大腿四頭筋を生検後直ちに細切し、液体窒素と液体ヘリウムにて-269℃にまで冷却した純銅ブロックに圧着して急速凍結し、そのごく表面を凍結割断装置で割断しdeep etching後low angleでプラチナとカ-ボンを回転蒸着しレプリカ膜を作製、また一部レプリカ膜はshadow angle 30°で一定方向からプラチナとカ-ボンを蒸着し作製し電顕にて観察、写真を撮影した。一定方向蒸着と回転蒸着レプリカ膜とも生の生検骨格筋細胞膜のとくにP面、(protoplasmic face)ではOAを観察することは困難であった。しかしグリセロ-ルに浸軟してない生の骨格筋標本のこのようなレプリカ膜にはdeep etchingがよく効き、筋原線維の微細構造がはっきりと観察可能であった。従って筋細胞膜のOAなどの微細構造は従来のfreeze fracture法の方がはっきり認識できることが判明したが、QDR法は細胞骨格の研究には極めてすぐれていることも判明した。
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