研究概要 |
高血圧および腎不全の病態に果たす心房性Na利尿因子(ANF)の役割を明らかにする目的で、血管壁ならびに腎ネフロンでのANFの作用を検討した。さらに、実験高血圧ラットならびに腎摘除腎不全モデルラットにおける外因性ANFの効果を検討した。1.ラット腸間膜動脈および腎動脈から酵素法により採取し培養を行った血管中膜平滑筋細胞(VSM)において、ANFはcyclic GMP(cGMP)産性を用量依存性に亢進させた。細胞外Ca濃度の変化やCu拮抗薬(diltiazem,nifedupine:10^<-5>M)はcGMP産生刺激作用に影響を与えなかった。腎動脈由来のVSMは腸間膜動脈由来のVSMよりもANFに対して、cGMP反応性が亢進していた。2.ANFの腎内結合部位は糸状体、髄質集合尿細管および皮質集合尿細管に多く認められた。髄質集合尿細管の結合特性を検討したscatchard analysisの結果はKD3.75×10^<-9>M、Nmax0.22×10^<-15>m/μgであり、単一の結合部位を示唆する直線関係が得られた。3.Subdepresser量(150μg/kg/日)のANFはnorepinephrine,angiotensinII、vasopressinおよびaldosteroneの持続注入によっておこる血圧上昇を抑制した。4.同量のANFは高血圧自然発症ラット(SHR)において、食塩負荷条件(1%食塩水飲用)下のみで一過性の血圧下降作用を示した。この時に水Na利尿は伴わなかった。DOCA食塩高血圧ラットにおいては、さらに低容量(75μg/kg/日)のANFで、持続的な血圧上昇抑制を示した。この時にも水Na利尿を伴わなかった。5.5/6腎摘除高血圧自然発症ラット(SHR)で、低容量(15μg/kg/日)のANFの投与により、高血圧の進展の抑制とともに腎機能の改善を認めた。6.SHRは対照ラットに比して血中ANF値は高値をしめした。また、腎摘除腎不全モデルSHRおよびDOCA食塩高血圧ラットでも、血中ANFの上昇が認められた。以上の結果から、ANFが高血圧および腎不全の病態に関与することが示唆された。
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