高血圧、腎不全および心不全の各モデルラットにおける心房性Na利尿因子(ANF)の動態を検討した。さらに、単離腎ネフロンや培養血管平滑筋および腎細胞でのANFの作用発現機序についても検討した。1.高血圧自然発症ラット(SHR)、DOCAあるいはアルドステロン食塩高血圧ラットのいずれにおいても、対照群に比して血中ANFは高値を示した。非降圧量ANFの投与により、SHRでは食塩負荷条件下のみで一過性の血圧下降を示した。同量のANFはDOCAやアルドステロン食塩高血圧の血圧上昇を抑制した。2.5/6腎摘除腎不全ラットでは、対照ラットに比して著明な血圧の上昇およびfractinal NA排泄率の増加とともに血中ANPの上昇を認めた。非降圧量ANFの持続投与により、高血圧の進展の抑制とともに腎機能の改善を認めた。3.5/6腎摘除腎不全SHRにアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やCa拮坑薬を投与すると、著明な降圧を認め、特にACEIでは腎機能の改善とともに血中ANFの下降も認めた。4.左冠動脈結紮により作成した心不全ラットでも血中ANFは著明な高値を示した。外因性ANFにより、水・Na利尿を認めたが、対照動物に比してその程度は減弱していた。5.^<125>I-ANFを用いた結合実験により、ANFの腎内結合部位は糸球体および髄質そして皮質集合尿細管であることが、明らかにされた。6.ANFのcyclic GMP産生刺激作用は腸間膜由来血管平滑筋細胞、髄質集合尿細管細胞に比して腎動脈由来血管平滑筋細胞や糸球体メサンジウム細胞で著明であった。 以上の結果から、ANFは腎や血管への作用を介して、高血圧、腎不全あるいは心不全の病態に関与していることが示唆された。また、いづれの病態においても血中ANFは高値を示し、外因性ANFの投与により病態の改善を認めることから、それらの病態に防御的に関与していることが推定された。
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