62年度の基礎的検討において、改良型腎用ウエブスターカテーテルによる腎血流量の測定は左腎に適しており、もし複数の腎静脈を有しなければほぼ信頼性のあることが認められた。この成果の一部は、第11回日本高血圧学会(昭和63年11月、和歌山)において発表した。 以上の基礎的検討にひきつづき、63年度はノルエピネフリンに対する腎血流量の反応を検討した。中央放射線部アンギオ室において、まず心拍出量測定のためのカルジオグリーン注入用及びノルエピネフリン静注用の静脈路と左肘静脈及び下肢静脈にそれぞれ確保し、次いで右大腿動脈より動脈圧測定用カテーテルを、右大腿静脈より改良型腎用ウエブスターカテーテルを左腎静脈に挿入した。準備終了後血圧がほぼ安定するのを待って、色素希釈法により心拍出量を測定し、熱希釈法により腎血流量を測定した。次いでノルエピネフリン50ng/kg/minを15分間静注し、その最後の10分間にあいついで心拍出量及び腎血流量を測定した。これらの検査にさきだち、患者には検査の内容を充分説明し、同意の得られたもののみを対象者とし、しかも検査前の収縮期血圧が200mmHg以上を示した場合にはノルエピネフリンの注入は行わなかった。降圧剤は2週間以上中断した後に検査を行ったので、検査当日は精神的ストレスなどの結果極端な血圧上昇を認め、対象者の半数のみにノルエピネフリンの静注が可能であった。 本能性高血圧患者4名の平均血圧は127●±☆15mmHgから138●±☆16mmHgへと上昇したが、心拍出量は5.2●±☆0.6l/minから5.3●±☆1.0l/minsと変化なく、左腎静脈血流量(左腎血流量)は620●±☆119ml/minから497●±☆133ml/minへ減少した。この結果から腎血流量はカテコールアミンに大きく影響を受けていることが示唆されたが、少数での検討結果であり、今後さらに検討を加える必要があるものと考える。
|