研究概要 |
本研究においては食塩依存性プロスタグランジン産生阻害因子の精製と生理作用とを検討することを目的とし, 特に本阻害因子の特性と血管平滑細胞への影響につぎ調べた. 食塩依存性プロスタグランジン産生阻害因子は分子量4000のペプチドであり, 血小板及び腎のプロスタグランジン合成を抑制することを報告した(Uehara et al,Hypertension 1987). 本因子のプロスタグランジン産生阻害機序はフォスフォリパーゼC及び(A2)の活性抑制にあり, また本阻害因子は腎により活性化または分泌されることを明らかにした. 本阻害因子は体液貯留性高血圧のモデルであるDahl食塩感受性ラット, 一腎性腎血管性高血圧ラット及びDOCA食塩高血圧ラット循環血液中に特異的に観察され, 他の遺伝性高血圧のモデルである高血圧自然発症ラットにおいては増加しないことを報告した(米国心臓協議会総会, 1987). またこれら体液貯留性高血圧モデルラットにおいては, その循環血液中に血管平滑筋細胞のフォスフォパリーゼC及び(A_2)活性を抑制する因子が存在し, 一方, 高血圧自然発症ラットにおいては本因子は出現しないことを明らかにした. 実際, 体液貯留性高血圧ラット大動脈壁フォスフォリパーゼ活性は有意に抑制されていることも報告した(Uehara et al,Prostaglandins 1987及び米国心臓協議会総会, 1987). 本因子はプロスタグランジン産生阻害因子と同一と考えられ, プロスタグランジン産生阻害因子は血管平滑筋細胞のプロスタグランジン産生系にも影響を与える可能性を示した(米国心臓協議会総会, 1987). 今後は中型動物を使用しプロスタグランジン産生阻害因子の精製を進めると共に, 血圧調節及び腎機能に与える影響につき検討してゆく予定である.
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