研究概要 |
心電図QT延長をきたす各種病態のうち、薬物中毒と甲状腺機能低下症をとりあげ、心電図波形変化、並びに心室不整脈発現の成立機序について、家兎を用いた動物実験により検討した。 1.家兎Langendorff灌流心の右室中隔面からガラス微小電極を用いて膜活動電位波形を記録するとともに、不関電極を関電極の近傍に置いた単極誘導法(modified bipolar electrode,MBE)を用いて細胞外電位を記録した。この細胞外電位波形のQ波は膜活動電位波形の立ち上り相と、T波の頂点(aT)は活動電位の再分極終了時点と良く一致しており、MBEの波形から心室各部の脱分極と再分極時点の判定が可能であることが判明した。 2.家兎灌流心の心室後面20〜30点からMBEを記録し、抗不整脈薬(bepridil quinidine)の作用を観察した。薬物添加後、心室後面各部のQーaT間隔(活動電位持続時間を反映)が延長するとともに、QーaTの空間的不均一性(△QーaT)が増加した。高濃度の薬物作用下では、△QーaTの増加に興奮伝播の遅延が加わり、心室各部における再分極終了時点の不均一性(△RT)が著しく増大した。この△RT増大が、これらの薬物のリエントリー不整脈誘発作用な主な原因であることが示唆された。 3.甲状腺切除4〜6週後の家兎より右室乳頭筋を切り出し、種々のモードの電気刺激下で膜活動電位波形と等尺性張力を記録して、対照群(甲状腺非切除群)と比較した。その結果、甲状腺機能低下症に伴う心室筋活動電位持続時間の延長が、心筋小胞体のCa取り込み、放出機能の障害と密接に関連する現象であることが示唆された。
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