研究概要 |
心筋血流の非侵襲的評価法として^<201>TI心筋シンチグラフィーか広く利用されているが, ^<201>TIはシングルフォトンであるため組織による吸収減弱に対する補正が困難で, 定量性に欠ける欠点がある. これに対してポジトロンは, 対角線上における同時計測法を用い, 深さに無関係に定量性に勝れた直線が得られる. 我々はすでに^<201>TIシングルフォトン・エミッションCTと心筋血流を反映する^<13>N-NH_3を用いたポジトロンCTを比較し, 後者が冠動脈狭窄部末梢の虚血領域をより忠実に反映することを報告した. 心筋梗塞急性期に血栓溶解療法や経皮的冠動脈拡大術を施行して, 梗塞サイズを縮小する試みが盛んに行われるようになってきた. しかし, 梗塞責任冠動脈灌流領域の心筋の運命は明らかでない. また, 梗塞領域にもかなりの残存心筋がみられることは病理学的にも明らかなところであるが, その臨床的評価は容易でない. ^<201>TI心筋シンチグラフィーにおける^<201>TIの再分布が一つの指標にはなるが必ずしも満足できるものではない. 正常心筋のエネルギー代謝は大部分が脂肪酸代謝に依っているが, 虚血心筋においてはむしろ糖代謝依存性となるといわれている. ポジトロンCTを用いると臨床的な検討が可能で, 我々は心筋梗塞例に^<18>F-フルオロデオキシグルコース(FDG)を投与して糖代謝をみた. 本剤はブドウ糖と同様に組織内に取り込まれるが, それ以上の解糖作用を受けないため心筋のグルコース摂取率を判定することが可能である. 急性心筋梗塞例の約半数例で, ^<13>N-NH_3欠損部に^<18>F-FDGの摂取がみられ, 糖代謝依存性の心筋が残存しており, 数ヵ月〜2年の経過で^<18>F-FDGの摂取が低下する傾向が判明した. すなわち梗塞領域にも再灌流によって助け得る虚血心筋の残存することが示唆された.
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