研究分担者 |
上松 正朗 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
石原 謙 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
大西 俊造 大阪大学, 医療短期大学, 教授 (00028367)
是恒 之宏 大阪大学, 医学部付属病院, 医員
井上 通敏 大阪大学, 医学部付属病院, 教授 (30028401)
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研究概要 |
心不全発症機転に於ける交感神経β受容体の役割を明らかにする目的で直径15μm(1.5×10^6/kg体重)のマイクロスフェア(MS)冠動脈内注入により慢性潜在性心不全モデルを作成し, その回復過程と代償機構としての交感神経活性変動との関連につき検討した. 心筋乳酸代謝面よりの検討では, MS注入5時間後までは乳酸産生を示し明らかな心筋虚血が観察されたが, MS注入24時間後には摂取側に傾き, 1週後にはほぼ対照時と同程度に回復した. またMS注入24時間後には, 心収縮機能及び弛緩特性とも障害され明らかな心不全状態を示したが, 1週後には収縮能は回復し弛緩特性のみ障害された状態が得られた. しかしながら, 1週後に於いても心筋ノルエピネフリンの枯渇, 電顕像における巨大ミトコンドリアや粗面小胞体が観察され虚血回復後にも心筋障害が残存している可能生が示唆された. また, 各時相に於けるイソプロテレノール(0.05μg/kg,i.v.)に対する反応性は対照時とほぼ同等に保たれていたが, フォルスコリン(アデニレートシクラーゼ活性化剤:30μg/kg,i.v.)に対する反応性は24時間後及び1週後とも優位に低下していたことら, β受容体を介する情報伝達機構においてアデニレートシクラーゼ以下の障害が持続していること, またその障害がβ受容体数の増加により一部代償されている可能性が示唆された. そこで画時相に於けるβ受容体数を〔^3H〕Dihydroalprenololにより測定したところ1週後に於いてβ受容体数の増加を認めた. こらにこのβ受容体数増加が心収縮能維持に代償的役割を果たしているか否かを検討するため, MS注入1週後イソプロテレノール(0.05μg/kg/min)を24時間持続静注によりdown-regulationを生じさせたところ, 安静時及びイソプロテレノールに対する反応性とも有意に低下していた. 以上, 可逆性の遷延性虚血からの回復過程に於いてβ受容体増加が心収縮能を代償することが示唆された.
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