研究概要 |
平滑筋にはCaスパイクを発生するもの(spike generating smooth muscle)と発生しないもの(non-spike generating smooth muscle)とがある. 冠動脈などの平滑筋は後者に属し, 通常は活動電位を発生しないことが知られている. しかし, tetraethyl-ammonium(TEA)などにより, Kコンダクタンスを低下させると, Caスパイクを生じて収縮する(文献1). 我々は, 兎心臓標本および冠動脈摘出標本を用いて検討し, これらの収縮は, 周期性を持っており, 臨床にみる冠動脈攣縮に類似していることを報告した(文献1-3). また, これらの収縮は, Caスパイクなどの電気現象によることが考えられていたが, そのイオン機序については不明であった. 本研究では, われわれが開発したloose patch clamp法を用い(文献4-5), 単離血管平滑筋細胞でこの収縮のイオン機序について検討した. 膜電位固定法による検討では, 膀胱平滑筋などでは正方向の条件電位により内向きの電流が最初にみられ, それに引続いて外向き電流が認められた. しかし, 血管平滑筋では, 正常タイロード液では, 正方向への条件電位を与えても正味電流は外向きのもののみしかみられなかった. しかし, これらの細胞においても細胞外液をBaと置き換えることにより, 内向き電流がみとめられた. この内向き電流は, ベラパミルなどのCa拮抗剤でブロックされることにから, 遅い内向き電流であると考えられた. 以上の研究結果から, 血管平滑筋では外向き電流が大きく, 通常の状態ではCaスパイクによる収縮は起こらないが, Caチャンネルは存在しているため, 特殊な条件下ではCa電流が生じることが示された(文献5).
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