研究概要 |
心房性利尿ホルモン(ANP)と腎交感神経の相互作用による腎機能調節を検討した. この研究の背景には次の事がある. 〔背景〕 発作性上室性頻拍時には利尿作用がおこる. この利尿作用は, 頻拍による血中へのANPの放出によると考えられる. しかし頻拍時のANP血中濃度は, 安静時の4〜5倍程度にしかならない. この程度の濃度になる様にANPを静注しても, 利尿作用はおきない. この事は血中ANPの腎への直接作用だけでなく他因子と共に利尿作用を調節していると思われる. そこで我々は腎機能調節に重要な役割を果している. 腎交感神経を介してANPが利尿作用を発現しているのではないかと考え次の実験を行なった. まずANPが腎交感神経活動にいかなる影響を及ぼすかを検討した. 〔方法〕 ラットをα-クロラロースで麻酔(60mg/kg, 次に20mg/kgを1時間毎に追加)し, α-ツボクラリンにて筋弛緩を行い, 人工呼吸器に装置した. ANP(20μg)を静注し, 血圧, 心拍数, 及び腎交感神経活動を投与后, 5, 10, 15分目に記録した. 同様の実験を迷走神経切断后にも行なった(n=7). 〔結果〕 ANP投与により収縮期血圧は-25±2, -22±3, -24±3mmHg(Pc0.01)低下したが, 腎交感神経活動は増加しなくて逆に-3±2, -7±2, -13±5%(Pc0.05)低下した. 迷走神経切断后はANP投与により-17±3, 18±3, -16±3mmHg(P<0.01)と同様の血圧低下がおこったが腎交感神経活動は5±4, 1±7, 4±5%と変化なかった. 〔考按〕 ANPは迷走神経存在下では腎交感神経を抑制し, 迷走神経切断によりその抑制はとれる. つまりANPは迷走神経を介して交感神経緊張低下をきたす, 更なる研究では, 上室性頻拍時の利尿効果が迷走神経を介して発現しているか否かを検討中である.
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