心房性利尿ホルモン(ANP)による腎機能調節を検討する上で、(1)ANPの腎への直接作用と、(2)腎機能に大きな影響を与える交感神経への影響を介しての二次的作用とに分けて考える必要がある。本研究ではまずANPが腎交感神経活動(RNA)に如何なる影響を与えるか、次にその機序を検討した。 〔昭和62年度〕 ANPによるRNAへの影響の検討 ラットにαークロラロース麻酔を行い、人工呼吸器に装着した。αーhANP及びニトログリセリン〔NG〕投与による血圧、心拍数(HR)及びRNAを検討した。同様の実験を迷走神経切断後にも行った。αーhANP投与により、血圧は、5、10、15分後には-25±2、-22±3、-24±3mmHg低下したがHR及びRNAは増加せず、逆に減少した。NGは、同等の降圧で、HRの増加をみとめた。迷走神経切断後にも切断前と同様の血圧低下をきたしたが、HR及びRNAは増加しなかった。これらの結果から、ANPは迷走神経を介して交感神経活動を抑制する、又、動脈圧受容体のリセットをきたすと考えられる。 〔昭和63年度〕ANPによる動脈圧受容体リセットの機序 本研究では家兎を用い、αークロラロース麻酔、人工呼吸下に血圧、大動脈減圧神経活動(ADNA)及び大動脈径(AoD)を測定し、αーhANP及びニトロプルシド(SNP)による変化を観察した。SNP投与により血圧、ADNA及びAoDは用量依存的に減少し、これらの関係は直線的であった。αーhANPでは血圧は減少するにもかかわらずAoD及びADNAは変化しなかった。αーhANP及びSNP投与中にNGやフェニレフリンにより血圧を急激に変化させると、血圧の低下に伴いAoD、ADNAも変化した。これらの結果はαーhANPが圧受容体そのものをserisitizeするのではなく、大動脈の拡張により圧受容器反射のリセットをきたすことを示唆する。
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