研究概要 |
「目的」一般に心室の収縮力は心筋の収縮力を反映すると考えられている. しかしながら, 心室は単一の細胞ではなく空間的な広がりを, 持っているため, 刺激伝導系を介して興奮が全体に伝わるのに時間がかかる. その結果, 心室筋の興奮がどれほど同期して起きるかが心室の収縮力の重要な決定因子になってくる. そこで, 本研究では心筋の収縮の同期性がいかに心室機能に影響を及ぼすかを検討した. 「方法」雑種成犬の心臓を摘出し, その冠動脈を支持犬の動脈血で定圧で, 潅流した. 心室内にラテックスの風船を挿入し, その風船の容積をサーボポンプで制御することにより心室容積を自在にコントロールした. 左心室の血圧は風船内に血圧計を挿入し測定した. 「初年次のプロトコール」心室筋の収縮の同期性を変化させるため, 心室を(1)右心室の基部, (2)左心室の基部, あるいは(3)心尖部から電気刺激し, 心房刺激で得られた心室の収縮力と比較した. 心室収縮の同期性は心電図のQRS時間から推定した. 即ちQRS時間が延長するほど同期性が低下しているとみなした. 「結果」心室収縮の同期性は心房刺激>心尖部刺激>右心室刺激=左心室刺激の順であり, 左心室の収縮力もこの順に従った. 左心室の収縮力は心房刺激に比較して, 心尖部刺激で5-10%, 両心室刺激でおよそ20%低下していた. 「考察」心室の興奮は心房刺激の時に最も同期して起きるものと思われる. 実際に心室を刺激する部位を変えると同期性は変化し, それに伴って心室の収縮力が変化することが示された.
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