本研究では、脂質代謝異常を伴う変異アポリポ蛋白質(C-III-O、E7およびE5)の3つのすべての遺伝子のクローニングに成功し、その構造異常を見出した。 イ.アポC-III-O(シアル酸を含まないアポC-III)を持つ家系を見出し、その構造解明のため染色体遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した結果、その構造中糖鎖が結合する74番目のスレオニンをコードする塩基(ACT)が点変異を生じてアラニン(GCT)に変異していることを解明した。このアミノ酸置換を生じることにより、糖鎖が結合できなくなったアポC-III-Oが血中に出現することが明らかになった。また、この点変異により新たにAluI制限酵素による切断部位が生じるため遺伝子診断が可能であった。 2.アポE7およびアポE5は、本邦のみで見出された変異アポ蛋白質Eであり、心筋梗塞や糖尿病の頻度が高いことが知られている。本研究では、変異アポ蛋白質を持つ患者より染色体遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。 (1).アポE7は299個あるアミノ酸残基のうち244番目と245番目の本来2つの連続しているゲルタミン酸(GAG)が変異し、リジンのコドン(AAG)に置換していることを見出した。この変異によりこの近傍には本来からのリジンがあり、正常アポ蛋白質Eではみられない正電荷をもつリジンのクラスターが生まれ、この領域が高脂血症や動脈硬化の病因と関連あるのではないかと推測している。 (2).アポE5はN-末端に近い3番目のグルタミン酸のコドン(GAG)がリジンのコドン(AAG)に点変異していることを見出した。このアポE5は、最近Tagimaらによっても遺伝子の解析がされているが、変異部位は同じてあった。
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