研究概要 |
<目的>本研究は正常発育に必要な最低限度の食塩量で継代飼育下SHRについて, 血圧の推移, 交感神経機能および腎尿細管膜のα受容体に変化を観察し, もって血圧上昇の機序を探ることを目的とした. <動物>離乳直後よりSHRを2群に分け, Na含有量がそれぞれ0.4%/g(正塩)と0.05%/g(低塩)で飼育した. 各群内交配により得た雄性仔SHR(F_1)と親(F_0)を同一の餌で飼育した. <結果>成長曲線, 収縮期圧曲線は正塩, 低塩の両群間に, F_0とF_1とも20週令まで差がなかった. 血漿カテコラミン濃度はF_1とF_0の8, 12, 20週令の両群ラットにおいて差はなかった. 血漿レニン濃度はF_0の8週において低塩群が正塩群より高値を示したのを除いては, F_0の12, 20週, F_1の全期において両群に差を認めなかった. F_0, F_1とも24時間尿中Na排泄量は, 低塩群で著明に低値であり, アルドステロン排泄量は高値であった. Kならびにクレアチニン排泄量には差はなかった. 無麻酔下で, F_0, F_1の8, 12, 20週令のSHRについて調べたノルアドレナリン(0.3, 10, 3.0μg/kg)およびヘキサメトニウム(3μg/kg)静注に対する血圧反応は, 前者の用量昇圧反応曲線, 後者の降圧反応のいずれも両群間に差を認めなかった. 以上の成績は, 低塩食飼育の影響はF_0において, 12週令以降であればF_1における効果と同一であると見倣し得ることを示すので, F_0について腎尿細管膜胞の管腔側形質膜と側底膜をパーコールを用いて精製し, 膜中のα受容体を検索した. 先ず, 正塩群の6週令においてα_1およびα_2受容体が側底膜に豊富に存在し, 後者の数が前者より数倍多いことが判明した. 現在6, 8, 20週令の低塩群におけるα_1, α_2受容体を測定中である. <まとめ>低塩食によってSHRの高血圧発症は阻止されない. 恐らくSHRは, 交感神経機能が長期食塩制限でも低下しない遺伝形質をもつを思われる. 腎尿細管α受容体の検索から腎のNa再吸収との関連がより明らかになろう.
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