研究概要 |
本年度の研究では,心房性Na利尿ホルモン(ANP)の分泌調節機構の解明,ANP不活性化臓器の特定,病態における血中,尿中ANPの態度などを明らかにしようと試みた。 第一の分泌調節機序の解明では,可逆的心不全犬を作り,従来みられていた心不全時のANP分泌様式のみでなく,本モデルが可逆的心不全モデルであることを利用して心不全が改善されていく時のANP分泌様式を観察した。その結果,心不全進行時も改善時もANP分泌は心房圧に比例して増減することが判り,圧の増減に非常に敏感な分泌を示すことが判った(雑誌論文有)。不活性化に関しては,従来腎臓で主として不活性化されるという論文が多かったので,イヌを用い主要臓器全ての動静脈にカテーテルを入れて同時採血した結果,不活性化は特定の臓器に限らずに全ての臓器でほぼ同様の率で起こっていることを証明した(雑誌論文有)。また,ヒトで心臓カテーテル検査を行った例についても同様の視点による検討を行い,臓器差のないことをみた(雑誌論文有)。 種々病態におけるANPについては,心不全でB-ANPが特徴的に血中及び尿中に増加し,症状の軽減と共に減少し,心不全の病態の重要な指標となることを示した(雑誌論文有)。また,腎機能低下によって血中ANPは増加せず,従来の腎機能の低下と共に血中ANPの上昇が起るとの報告は,生物学的活性部位を認識していない抗体を用いて測定しているため誤って高値としていることを指摘した(雑誌論文有)。心臓外科手術中のANPも観察し,低体温でANPの不活性化が起こらないこと,心房の急激な拡張ではα-ANPのみが著しく増えることをみた(雑誌論文有)。 以上のごとく,ANPに関する多くの新しい知見を得ることができた。
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