雑種成犬20頭を開胸下に左前下行枝を90分間結紮した群 (1-90) とその後20分間と90分間再潅流した群 (Rep-20群、Rep-90) を作成した。実験終了後に拍動状態で超迅速に心筋を採取凍結した系において下記の結果を得た。 1) 凍結心筋のラジカルを電子スピン共鳴装置 (ESR) を用い-150℃で測定したところ、正常心筋にはg=2.005を示すシャープなラジカルが存在した。 2) このラジカルの種はCoenzyme Q_<10>のアニオンラジカルのg値と綿幅が一致した。Power Saturation法によるシグナルの特性も一致した。このことから正常心筋にはCoenzyme Q_<10>のアニオンラジカル (CoQ10〓) が存在することが明かとなった。 3) CoQ_<10>〓の濃度は、非虚血部では8.2±×10^<12>Spins/mg proteinであったが、1-90群の虚血部では、1±1.3×10^<12>Spins/mg proteinに減少した。Rep-20群、Rep-90軍の虚血部では、再び正常値に復した。 4) 非凍結部の心臓からミトコンドリアを分離した。分離ミトコンドリアのStateI呼吸を-196℃で凍結し心筋組織と同一条件でESRスペクトルを測定した。CoQ_<10>〓の値は正常心筋の3〜5倍の値を示した。酸素が消費されるとCoQ_<10>〓は消失した。一度CoQ_<10>〓が消失したミトコンドリアに室温で酸素をbubbleすると再びCoQ_<10>〓は酸素の存在下でCoQ_<10>〓とCoQ_<10>H_2間で電子の受渡しをする中間物質と考えられた。 5) 雑種成犬40頭を用い、90分閉塞後60分間再潅流実験においてSODを投与した群と非投与群で左室機能、左室収縮緑膿菌、虚血部Epicardial ECGのST偏位、さらに左室心筋壊死範囲を測定した。SOD投与群で、壊死範囲が有意に減少していた。すなわちSODは再潅流障害を減少させ、再潅流障害の一因にラジカルが関与することを示した。
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