研究概要 |
(1)ウサギ房室結節の微小標本(0.2×0.2×0.2mm)に二重微小電極法を用いて細胞膜活動電位記録と電圧固定実験を行った. 低K^+濃度, 高Ca^<2+>濃度あるいは強心配糖体(acetylstrophanthidin)の灌流により, 最大拡張期電位は浅くなり, 活動電位振幅は減少, 最大脱分極速度は低下し, また第4相の電位は通常の右上がりの拡張期脱分極でなく, 全体に盆状の低下を示して, 活動電位は振動様となった. 自発興奮頻度は明らかに増大した. 電圧固定実験で-40mVの保持電位から-20,-10および0mVへ300または500msecの脱分極パルスを与えた後, -40mVに再分極させると, 約200msec後, 膜電流記録に内向きの屈曲が生じて, 一過性内向き電流の発生を示した. 更に活動電位再分極終了時に膜電位を-65mVに固定すると, 対照灌流時に滑らかなペースメーカー電流が記録されるのに対して, 上記3條件では一過性内向き電流が発生し, この時に上述の如き活動電位波形変化と自発興奮頻度増大が見られたことから, 一過性内向き電流がこれらの活動電位変化の原因であることが証明された. こうした一過性内向き電流は緩得な内向き電流を遮断するCD^<2+>や, 筋小胞体へのCa^<2+>取込みとそれからの律動的放出を抑えるCaffeineの添加によって抑制され, これが細胞内Ca^<2+>負荷に依存することが判明した. (2)イヌPurkinje心室筋標本を組織浴中で灌流し, 低K^+または低K^++高Ca^<2+>濃度の影響を見た. 標本に周期800〜300msecで10〜20発の電気刺激を与えると, 活動電位終了後に低K^++高Ca^<2+>灌流時には高率に一過性脱分極を生じ, 時にこれから立上がる自発活動電位(撃発活動)をも認めたが, 低K^+単独ではこうした現象の発生は稀であった. 一過性脱分極発生後に灌流液にI群Bの抗不整脈剤mexiletine(2μg/ml)を加えると, 一過性脱分極は抑制された. 抑制が著明でない場合に薬剤濃度を5μg/mlに増すと一過性脱分極は消失し, 撃発活動への本剤の有効性が示された.
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