研究課題/領域番号 |
62570406
|
研究機関 | 藤田学園保健衛生大学 |
研究代表者 |
渡部 良夫 藤田学園保健衛生大学, 医学部, 教授 (70084572)
|
研究分担者 |
羽渕 義純 藤田学園保健衛生大学, 医学部, 研究員
|
キーワード | ウサギ房室結節 / 電圧固定法 / 一過性内向き電流 / イヌPurkinje細胞 / 細胞膜活動電位 / 一過性脱分極 / Mexiletine |
研究概要 |
昨年度は、主としてウサギ房室結節細胞として犬Purkinje線維における遅延後脱分極(一過性内向き電流)の誘発条件と、I群Bの抗不整脈剤であるmexiletineの遅延後脱分極に及ぼす効果を検討した。本年は一過性内向き電流の発生機序とI群坑抗整脈剤の作用機序を調べるため、房室結節の微小標本(0.2×0.2×0.1mm)に電圧固定を応用して、以下の成績を得た。一過性内向き電流は、強心配糖体(acetyl strophanthidin)、低k^+濃度、高Ca^<2+>濃度懽流により誘発され、0.1mMのCd^<2+>で緩徐な内向き電流を遮断すると消失、更に筋小胞体へのCa^<2+>の取り込みを抑制するcaffeineを作用しても消失した。従って一過性内向き電流の成因として、細胞内Ca^<2+>の加飽和が示唆され、その発生機序として、(1)細胞内Ca^<2+>イオンが非特異的な陽イオン・チャネルを活性化することと、(2)Na^+-Ca^<2+>交換系が細胞内Ca^<2+>の増加により賦活されること、が考えられた。両者を判別するため、細胞外Na^+が非特異的陽イオン・チャネルのコンダクタンスを変化させないのに着目して、0.5mM k^+潅流により生じた一過性内向き電流に及ぼす低Na^+の効果を観察した。外液Na^2の50%をLi^+あるいは蔗糖で置換すると、一過性内向き電流は単相性に減少し、2分後にはいずれの電位においても観察されなくなった。次に0.2mM k^+により誘発された一過性内向き電流に、Na^+-Ca^<2+>交換系の遮断剤である50μMLa^<3+>を作用させると、1mM Ca^<2+>により緩徐な内向き電流が遮断された状態でも、本電流は減少ないし消失した。以上の成績より、房室結節における一過性内向き電流は、細胞内Ca^<2+>濃度の増加によるNa^+-Ca^<2+>交換系の賦活により生じること、更にI群抗不整脈剤は急速なNa^+電流を遮断することにより、細胞内Na^+負荷を軽減、その結果Na^+-Ca^<2+>交換系を抑制することにより、一過性内向き電流を遮断することがあきらかとなった。
|