心筋細胞における遅延後脱分極の発生機序とI群抗不整脈剤の遅延後脱分極抑止機序を調べるため、犬Purkinje線維およびウサギ房室結節細胞に微小電極法を応用して、活動電位とイオン電流の測定を行った。遅延後脱分極は、強心配糖体 (acetylstrophanthidin) 、低K^+濃度、高 ┣D32+ (/) a┫ D3濃度といった潅流条件下で、Purkinje繊維を高頻度刺激した後、あるいは房室結節では拡張期脱分極相の盆状低下として発現、自動能を促進した。房室結節微小標本 (0.2×0.2×0.1mm) を用いてイオン電流の解析を行うと、遅延後脱分極の本態は一過性内向き電流であった。本電流は0.1MNCd┣D12+┫D1で緩徐な内向き電流を遮断すると消失、I群抗不整脈剤のmexiletineでNa┣D1+┫D1電流を遮断しても消失、更に筋小胞体へのCa┣D12+┫D1の取り込みみを抑制するcaffeineを作用しても消失した。従って、一過性内向き電流の成因として、細胞内Ca┣D12+┫D1の加飽和が示唆され、その発生機序として、 (1) 細胞内Ca┣D12+┫D1イオンが非特異的な陽イオン・チャンネルを活性化することと、 (2) Na┣D1+┫D1-Ca┣D12+┫D1交換系が細胞内Ca┣D12+┫D1の増加により賦活されること、が考えられた。両者を判別するため、細胞外Na┣D1+┫D1が非特異的な陽イオン・チャンネルのユンダクタンスを変化させないのに着目して、0.5mNK┣D1+┫D1潅流により生じた一過性内向き電流に及ぼす低Na┣D1+┫D1の効果を観察した。外液Na┣D1+┫D1の50%をLi┣D1+┣D1あるいは蔗糖で置換すると、一過性内向き電流は消失した。次に、0.2mMK┣D1+┫D1により誘発された一過性内向き電流に、Na┣D1+┫D1-Ca┣D12+┫D1交換系の遮断剤である50uML ┣D33+ (/) a┫ D3を作用させると、本電流は減少ないし消失した。以上の成績より、房室結節における一過性内向き電流は、細胞内Ca┣D12+┫D1濃度の増加によるNa┣D1+┫D1-Ca┣D12+┫D1交換系の賦活により生じること、更にI群抗不整脈剤は急速なNa┣D1+┫D1電流を遮断することにより、細胞内Na┣D1+┫D1負荷を軽減、その結果Na┣D1+┫D1-Ca┣D12+┫D1交換系を抑制することにより、一過性内向き電流を遮断することがあきらかとなった。
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