研究概要 |
麻疹ウイルスの構成蛋白(HA69K, NP60K, F40K, M36K)に対するマウスモノクローナル抗体を作成した. Vero細胞に麻疹ウイルスLEK株を感染させ, 各構成蛋白の局在を, 作成したモノクローナル抗体を用いて検索した. この結果, HA, Fは細胞表面, 胞体の表面に隣接した部位に, Mは胞体の核周辺に, NPは細胞核および胞体の核周辺に存在することが確認された. 同様に麻疹ウイルスシユワルツ株の持続感染細胞であるNC-S細胞における麻疹ウイルス構成蛋白の局在を検索したが, Lytic infectionであるVero細胞における存在部位, 存在様式と全く同一の所見が得られた. 免疫不全状態に発症して死亡した2例の巨細胞性肺炎の患児の剖検肺組織に麻疹ウイルスを同定した. 死亡時において, 肺組織の巨細胞に一致してすべての構成蛋白が存在することから, この疾患は麻疹ウイルスの無制限の増殖の結果発来する間質性肺炎による呼吸不全を直接死因と想定された. 発症以来7年の経過で死亡した亜急性硬化症全脳炎(SSPE)の患者の剖検脳組織を検索した. 脳組織は病理学的に硬化性変化が著明であり, 細胞浸潤, 封入体の存在などの炎症性所見に乏しく, 電子顕微鏡による形態的観察でも, モノクローナル抗体を用いた免疫組織学的検索でも, 麻疹ウイルスの存在を証明する所見が得られなかった. 今後急性期の患者材料(例えば脳脊髄液)の検索が必要である.
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