研究概要 |
小児期特発性近位尿細管機能異常症は, 蛋白尿を主徴として, 学校検尿, 3歳児検尿にて発見される新しい疾患として1984年, われわれが最初に報告して以来, 自験例(7例)と, 村上らの全国集計による確診例(28例)が報告されている. 本疾患は以下のごとき特徴的な臨床像を呈することが判明してきた. 1.比較的少量の蛋白尿を示す. 2.血尿を伴うことは少ない. 3.発育障害はない. 4.男子に多く, 兄弟例も認められる. 5.小児期では腎機能は正常で, 腎形態異常がない. 6.尿蛋白分析 1)アルブミンが少ない. 2)尿中β_2-ミクログロブリンの著増 3)尿中リゾチームの出現. 4)尿中蛋白のセルローズアセテート膜電動泳動法でα-グロブリン分画が高い. 5)SDS-PAGEでは, 分子量4万以下の分画が多い. さらに, 腎組織像にて微少変化型を示すものが大部分であるが, 一部に巣状硬化像を示す症例もみられている. 現在まで最長30年にわたる症例の予後調査では, 低燐血症, 全汎性アミノ酸尿, 糖尿が認められる以外, 腎機能は正常であり, 普通社会生活を送っている. 本疾患の病態として, 近位尿細管からの低分子量蛋白の再吸収異常が最も考えられるが, 今後他の尿細管疾患との尿蛋白の異同についての検討を加える予定である.
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