研究概要 |
Adrenoleukodystrophyは進行性の脳白質障害と副腎障害を特徴とする遺伝性疾患である. 本症の本態はなお不明で, 適切な治療法が確立されていないため, 患児は不幸な転帰を迎えている. 本研究はこの点を重視し, 本症の本態解明・診断および治療法の確立を目的とした. 患児の各組織に極長鎖脂肪酸(特にC_<26:0>)が蓄積していることに注目し, 細胞内小器官の一つであるperoxisomeにおける極長鎖脂肪酸β-酸化能を検索した. 先づ, 基質となる^<14>C-C_<26:0>をKishimotoらの方法に従いC_<25:0>より合成した. この基質を用い患児および正常人よりの培養皮膚線維芽細胞におけるβ-酸化能を測定した. しかし, 活性が極めて低いため, 通常の培養で得られる細胞数にては信頼出来る結果が得られなかった. このため, 測定対象を変更し, 現在白血球における極長鎖脂肪酸β-酸化能を検索中である. 本症の診断に関しては, 先づ生化学的に赤血球膜スフィンゴミエリン構成脂肪酸をGC-MSを用い分析し, C_<24:0>とC_<26:0>の定量が患児の診断のみならず保因者の検出にも有用であることを明らかにした. 次に生検直腸粘膜の電顕的検索により患児の組織球に本症の特徴とされるcytoplasmic lamellar inclusionを患児全例に認めた. これらの検索法を用いれば発症前の患児をも診断可能となった. さらに本症の初期病像を自験例を中心にまとめた. 本症の治療に関しては, 抗脂血症剤であるclofibrateがperoxisomeにおける脂肪酸β-酸化能を著しく高めることに注目し, これを臨床的および患児よりの培養皮膚線維芽細胞で試みたが, いずれにおいてもその効果を認めることが出来なかった. 現在, 内在生の極長鎖飽和脂肪酸合成を抑制する目的で, 長鎖および極長鎖不飽和脂肪酸添加の効果を患児よりの培養皮膚線維芽細胞を用いて検索中である.
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