Adrenoleukodystrophy(ALD)の早期診断および治療法の確立を目的に以下の研究を行った。 1)ALDの早期診断を可能ならしめるために、実験例と本邦報告例の計31例について、初発症状および医療機関受診時の症状を検索した。 2)本症の生化学的診断において、赤血球膜スフィンゴミエリン構成極長鎖脂肪酸の分析が患児の診断ばかりでなく、本症の保因者検索にも有用であることを明らかにした。 3)本症の組織学的診断については、7例の患児よりの生検直腸粘膜の電子顕微鏡的検索において、本症に特徴とされるcytoplasmic lamellar inclusionを全例に認めた。以上の如く、生化学的および組織学的診断法を確立した。 4)本症の治療に関しては、現在までの国内外の報告を検討し、食事療法の可能性を検討した。患児よりの培養皮膚線維芽細胞を用い、培養液に不飽和の長鎖および極長鎖脂肪酸(オレイン科[C_<18:1>]およびエルカ酸[C_<22:1>])を添加し、極長鎖飽和脂肪酸の含有量に及ぼす影響を検討した。オレイン酸を30μM以上添加した場合、C_<26:0>の含量は未添加の対照の63%以下と著明に減少した。この極長鎖飽和脂肪酸の減少は極長鎖不飽和脂肪酸の増加を伴っていた。エルカ酸においても同様な効果がみられたが、その効果は前者よりもより著明であった。 5)この結果をもとに2名の患児にC_<26:0>の制限およびC_<18:1>とC_<22:1>の添加よりなる食事療法を施行中である。現在、明らかな症状の進行は認めていない。 現在、ALDのみならZellweger症候群等のペルオキシゾーム病の新生児マススクリーニングの可能性を検討中である。
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