研究分担者 |
田中 丈夫 国立呉病院, 小児科, 臨床研究部 (50127669)
脇 千明 広島大学, 医学部附属病院, 医員
増田 裕行 広島大学, 医学部附属病院, 医員
田中 義人 広島大学, 医学部, 講師 (90116624)
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研究概要 |
昭和62年度には代表的小児悪性腫瘍である神経芽細胞腫の症例の集積が最も進み, 約70症例が癌遺伝子の一つであるHaーras遺伝子の形質発現について, 主に免疫組織化学的に検討された. 現在, 既に長期(二年以上)の観察期間を過ぎた生存例および死亡例の約50例について, その臨床的特徴とHa-ras遺伝子の形質発現の関連性をレトロスペクティブに分析し, 以下の結論を得た. (1)免疫組織化学により検出されるHa-ras p21発現量と神経芽細胞腫症例の生命予後には有意な関連性が見られた. 即ち, 腫瘍細胞内にHa-ras p21の発現量の多い症例は二年以上の非再発生存例が多く, 腫瘍進展度の少ない(stage I&II)症例に多くみられた. これに対し, Ha-ras p21発現の少い腫瘍は, 腫瘍進展群(stage III&IV)に多く, 再発, 腫瘍死に至る予後不良の症例が大部分を占めた. この関係は統計学的にも有意であり, 患者予後に関連する腫瘍マーカーとしての有用性が期待出来る. 〔この結果は論文として, Cancer Researchに掲載予定(in press)である. 〕 (2)神経芽細胞腫のHa-ras遺伝子産物の発現がDNAレベルでの変化によるものかをSoathern blottingにより検討中である. この分析には新鮮冷結保存された組織が必要であり, 現在症例数は少いが, 予備的検討結果ではDNAレベルでのHa-ras遺伝子と蛋白質としてのras-p21の発現の間には有意な関連性は見られていない. 遺伝子の転写(transcription)或は翻訳(translation)段階における調節機構の存在を窺わせる所見である. 現在(1)(2)について更に症例数を増し検討中である.
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