研究概要 |
ビタミンD依存性くる病II型は1、25(OH)_2Dに対する標的細胞の受容体を含めた作用経路の障害に基ずく疾患である。我々は本症の5症例の培養皮膚線維芽細胞を用いて細胞内ビタミンD作用経路の障害について検討した。いずれの患者でも細胞質受容体は正常であった。〔^3H〕1、25(OH)_2D_3の核への取り込みは正常対照の7〜27%と低下していたが、親和性は正常であった。次に線維芽細胞の核に取り込まれた〔^3H〕1、25(OH)_2D_3細胞質受容体複合体の種々濃度のKclによる抽出パターンを検討した。正常対照では180〜240mMKclによりほとんどの複合体は抽出され、210mMに抽出ピークが見られた。患者細胞では1症例で正常対照と同様、210mMKClで抽出ビークが見られた。この症例では、1,25(OH)_2D_3やDNAとの結合部位以外の受容体構造に異常があることが示唆された。一方2症例では90mMKClで抽出されたことから、これらの症例では1,25(OH)_2D_3受容体複合体がDNAに結合する部位の異常が考えられた。したがってKClによる複合体抽出パターンの結果から、DNAへの取り込みの障害のある症例には、2亜型が存在し、それぞれ異った受容体変異蛋白の存在することが明らかとなった。DNAセルロースカラムを用いる方法に比べ、我々が用いた新しい方法により、より生理的条件での事故DNAとの結合能を評価できた。次に細胞内受容体系を介した1.25(OH)_2D_3による25(OH)D-24-水酸化酵素の融合能を検討した。正常対照では10^<-8>〜10^<-7>M1.25 (OH) _2D_3により24水酸化酵素は最大活性をしめした。一方ビタミンD依存性くる病II型5症例の線維芽細胞では10^<-8>10^<-7>および10^<-6>M1.25(OH)_2D_3でも24水酸化酵素の誘導は認められなかった。これらの結果〔^3H〕1.25(OH)_2D_3の核への取り込みの障害の程度は症例によりまちまちであるが、患者細胞では1.25(OH)_2D_3に対する反応は見られないことが明らかにされた。
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