研究概要 |
(1)IDDM発症予測に関する研究 小児期発症IDDM患者の免疫遺伝学的特性を明らかにするために, 全国の医療施設と共同してHLA, 自己抗体・抗ラ氏島細胞抗体の検討を行った. IDDM患者ではHLA-Cw1, Bw35, Bw54, DR4, DRW9の頻度が健常人に比べ有意に高く(CP<0.001, RR=2.95, CP<0.01, RR=2.02, CP<0.001, RR=3.61, CP<0.001, RR=2.54, CP<0.01, RR=2.49), またHLA-Bw52, DR2の頻度が有意に低い(CP<0.001, RR=0.05, CP<0.001, RR=0.12)ことが明らかになった. IDDM患者を自己抗体の有無によって分類すると, 自己抗体陽性群ではHLA-DRw9の頻度(CP<0.01, RR=3.3)が, また自己抗体陰性群ではHLA-DR4の頻度(CP<0.01, RR=3.9)が有意に高いことが示された. さらに自己抗体陽性群では自己抗体陰性群に比べICAの持続期間の長いことが明らかになった. これらの結果は, 免疫遺伝学的マーカーがIDDMハイリスク群における発症予測に応用できる可能性および免疫療法の適応の決定にも応用できる可能性を示している. (2)IDDM発症予防および治療に関する研究 免疫抑制剤あるいは免疫調節剤によるIDDM発症予防および治療の可能性をモデル動物であるNODマウス, BBラットで検討した. 免疫抑制剤であるサイクロスポリンを投与した動物ではinsulitisおよび顕性糖尿病の出現が予防され, 一部で発症後の投与によっても効果が認められた. 免疫調節剤であるβ-1,3 D-Glucan投与によっても同様の効果が認められた. これらの予備的な結果は免疫療法によるIDDMの予防あるいは治療の可能性を強く示唆するものである.
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