ヒトパルボウイルスB19感染症は、伝染性紅斑を除いてわが国の実態は全く研究されていない。これを明らかにし、血液製剤の安全性も含めて患者の感染性を明らかにした。 1.このウイルス感染が表したことを証明した病型は、熱性疾患、不定の発疹症、血管性紫斑病、出血斑、多関節炎、溶血性疾患をもつ個体の造血障害発作、急性または持続性の貧血(これは免疫抑制状態のときにみられる)、および胎児障害であった。 2.ヒトパルボウイルスB19DNAを1968年の伝染性紅斑の患者血清中に見出した。これはもっとも古いものであり、また伝染性紅斑の直接的病原の証明となる。と同時に伝染性紅斑の発疹期の感染性を示す。 3.造血障害発作は北海道、本州、四国、九州で31例がこのウイルスによって起こったことを証明した。最も古いものは1981年3月の大阪の例であった。基礎疾患は31例が遺伝性球状赤血球症、1例はグルコース6燐酸脱水素酵素欠損症で、世界初の症例である。 4.胎児感染は死亡した6例の非免疫性胎児水腫、1例の流産を証明した。1987年の伝染性紅斑流行年に、出生15000人の福岡市で3例の胎児水腫死亡例が存在していたことになり、実教はこれ以上と推定される。 5.第9因子製剤の1本の製品にヒトパルボウイルスB19DNAを検出した血液製剤の安全性と、その破壊法に問題があることを見出した。 ヒトパルボウイルスB19はヒトに可成り危険なウイルスであることを国内ではじめて証明した。それぞれの危険率、頻度等まだ解明すべき問題が多いが、この検索を行うための技術的開発が大きな課題として残っている。
|