研究概要 |
内皮細胞を中心とした血管傷害は糖尿病, 小児型皮膚筋炎などで認められることがよく知られているが, 私達はドゥシェンヌ型筋ジストロフィー及び先天型筋ジストロフィー症にも筋組織内血管の著明な変化が認められることを観察し報告した. これらは毛細血管基底膜の三層以上の重なり, 壊死および再生状態の血管の増加, 多数の水腫状に膨化した内皮細胞, 血小板による毛細血管の閉塞状態および小動静脈内の血小板凝集による閉塞状態などであった. これらの変化は程度の差はあるものゝドゥシェンヌ型, ベッカー型, 先天型で認められ, 筋ジストロフィー症に共通のものと考えられた. 画像解析装置による形態計測学的研究では筋ジストロフィー症筋組織内毛細血管の血管面積, 内皮細胞面積, 周細胞面積がコントロール群に比して著明に大きいことが観察された. このことは筋ジストロフィー症において血管の変化が明らかに存在し, これが一次的な変化であれ二次的な変化であれ本症の筋線維壊死・再生に大きく関っていることが示唆される. 血管の変化と筋線維壊死の組合せは実験的セロトニンミオパチーで観察されており, 私達もラットを使った実験を行いセロトニンによって上記と同様の血管変化と筋線維壊死を観察し1987年ジャカルタで開催された第2回アジア・オセアニア小児神経学会で報告した. さらにセロトニンミオパチーの長期例の観察やPAF, ADPを用いラットに血小板凝集を起さしめ各臓器の血管の変化を観察するための実験を行っている. またコラーゲンタイプI, IV, V, VI等の抗体を用いて筋ジストロフィー症の筋組織内血管および神経を観察中である.
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