研究概要 |
Reye症候群は急性ミトコンドリア障害によっておこるが, その成因や有効な治療法は確定していない. 本症では発作時にカルニチン欠損状態があり, ミトコンドリア異常とカルニチン代謝との関連を明確にし, L-カルニチンによる早期治療を確立するため本研究を行ない, 下記の実績を得た. 1.Reye症候群マウス作成;ミトコンドリア毒である4pentenoic acidは200mg/kg腹腔内投与, あるいは50mg/kgづつ計900mg/kg投与で, また, バルプロ酸は300〜400mg/kg/dayを7日間腹腔内投与を行ないReye症候群マウスが作成されることがわかった. 肝の電顕像でもミトコンドリアの変性・膨化所見が確認された. 次年度は, L-カルニチンを早期から予防あるいは併用投与を行ない, 治療効果について生化学的・組織学的に検討する. 2.Reye症候群患児に対するL-カルニチン早期投与について;3例のReye症候群(stageIIは2例, stageIIIは1例)患児に, L-カルニチン400mg/kg/dayを経口・あるいは静注投与による治療を試みた. 血中カルニチンは遊離型が低値でアシル/遊離比の増加を認め, 尿中では, 中等量のジカルボン酸排泄を確認した. これらの所見はL-カルニチン投与後, すみやかに改善された. L-カルニチンがミトコンドリア機能回復に対し有効に作用したものと考えた. 次年度も症例を増やして検討したい. 3.研究発表について;Reye様症候群の発作をおこす疾患の1つとしてOTC欠損症が知られているが, この疾患においてカルニチン欠損が存在し, L-カルニチン投与にて高アンモニア血症発作の予防が可能であることを報告した. (J.Pediatrics 1988年(印刷中))(Enzyme 1987年) またReye症候群(stageII)の2例に早期からL-カルニチンを使用し後遺症なく治癒させ得たことを報告した. (第29回日本小児神経学会, 1987年, 東京)
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