Reye症候群のミトコンドリア障害をカルニチン代謝の面から検討し本症のL-カルニチン早期治療効果について研究を行ない以下の実績を得た。 1.Reye症候群マウスの作成とL-カルニチン治療効果について。 (1)Reye症候群マウスは、4-pentenoic acid 200mg/kg膜腔内投与あるいは50mg/kg/dayづつ計900mg/kg投与で作成され、またバルプロ酸300〜400mg/kg/day、7日間腹腔内投与でも作成され得ることがわかった。 (2)L-カルニチン予防投与は急性の場合200mg/kg/dayの大量で、慢性の場合100mg/kg/dayを約7日間投与で予防可能と考えられた。しかし、一旦、発症してしまったモデルマウスにはL-カルニチン経口投与では200〜400mg/kg/dayの大量投与を行なっても脂肪肝およびミトコンドリア障害の進展を防止できなかった。血中アンモニア値を下げる効果はみられた。今後は、L-カルニチン静注あるいは腹腔内投与での効果検討が必要であり、さらに幼若マウスでの治療効果の検索を行なっていきたい。 2.Reye症候群患児に対するL-カルニチン早期投与の効果判定。 3症例のReye症候群(stageII2例、stageIII1例)患児にL-カルニチン400mg/kg/dayを経口あるいは静注投与を試みた。stageIIの早期から投与した2例では経口・静注いずれでも後遺症を残さず治癒したが、治療投与が遅れた1例ではstageIII→IVへ進展し神経学的後遺症を残した。3症例とも投与後ジカルボン酸尿はすみやかに消失し、カルニチン欠損状態からも回復した。L-カルニチンは本症の早期から大量投与が有効と思われた。 3.研究発表について。Reye様症候群をおこす部分的OTC欠損症では、カルニチン欠損がありL-カルニチン投与が有効と思われた。Reye症候群では発症早期から大量のL-カルニチン投与が有効と考えられ、これらの研究成果は別紙のごとく報告した。
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