研究概要 |
ダウン症候群に合併したmyelporoliferative disorder(Transient abnormal myelopoiesis,TAM)の15例につき電顕および細胞化学的観察をおこなった. 芽球を形態計測すると, 急性リンパ性白血病(ALL)より急性骨髄性白血病(AML)に近い形態的特徴を有していた. 即ち, 胞体面積はAML細胞に似て広く, ミトコンドリア数もAML細胞とほぼ同じ値を示した. それぞれの芽球の胞体内には, 巨核球系細胞に特徴的なα顆粒, 赤芽球系にみられるフェリチン含有顆粒, θ顆粒, 好塩基顆粒, 好中球顆粒などがみられた. このことより, TAMの芽球は多方面への分化傾向をもつ芽球であることが推測された. 細胞化学的にみると, 血小板ペルオキシダーゼは症例により差があり, 1%〜92%の芽球に陽性反応を示した. 骨髄ペルオキシダーゼは陽性反応を示す芽球は少なかった. 酸性フォスタファターゼおよび過ヨウ素酸反応性糖化合物の反応をみると, 胞体に集積した嚢状の陽性反応を示す部分があり, GERL(Golgi associated endoplasmic ret culum)と形態的に一致したGERLは顆粒形成などが著明なactiveな細胞によく発達する. TAMの芽球は分化, 成熟にむけてactiveに活動していると思われる. 胞体内のRNAは豊富だった. 酸性ムコ多糖類の反応をみると, 本反応陽性の好塩基球顆粒を思わせる顆粒をもつ細胞がみられた. 大豆レクチン結合部位を金コロイド法にてみると, 本反応陽性を示す好酸球顆粒をもつ芽球は少なかった. 免疫細胞化学的方法を用いて巨核球形質の出現を見ると, IIa-iiiB陽性の芽球がかなりみられた. 血小板ペルオキシダーゼ陽性の芽球の多いことも加えて, 巨核球性白血病との関連もあり, 比較検討した. 以上得られた結果は昭和62年日本臨床血液学会, 日本小児血液学などに発表した. 昭和63年日本小児科学会, 国際血液学会(ミラノ)でも発表予定で演題提出した.
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