研究概要 |
前年度までにダウン症候群に合併したtransient myeloproliferative disorder(transient abnormal myelopoiesis,TAM)の芽球の電顕および電顕細胞化学的特性を明らかにした。今年度は以下の2つについて研究を行った。 1.TAMの芽球をダウン症候群に合併した巨核球性白血病(MKL)の芽球と比較し、自然治癒するTAMと抗腫瘍剤による治療を必要とするMKLの芽球の細胞学的差異を検討。 12例のTAMと13例のMKLを用いた。未熟な芽球はTAMとMKLの両者間に電顕形態的に差はなかったが、TAMではこのほかに、成熟傾向を示すものがあり、巨核球、顆粒球、赤芽球などへ分化傾向を示すものがあった。MKLではこのような分化傾向はみられず、わずか赤芽球幼若細胞の特徴を示すものや、好塩基球への分化を示すものが若干みられるにすぎなかった。血小板ペルオキシダーゼは両者共48%の陽性率を示し、また単クローン抗体でも著明な差は見出せなかった。 2.芽球の培養による変化、成熟などに対する電顕的観察。 我々はTAMの芽球が培養により、好塩基球、好酸球、好中球、マクロファージ、赤芽球などに分化することを光顕的に観察し報告した(Blood 69;508,1987)。特に、TAMでは好酸球、好塩基球などの割合が多い。培養の好塩基球はin vivoの好塩基球と電顕的に形態が異なる(Eur.J.Haematol 42:81,1989)のを我々は報告したが、TAMでは、このような好塩基球に好酸球顆粒に類似の顆粒を混じてもつ細胞がみとめられた。好酸球の顆粒を同定するため、好酸球に特異的に反応するレクチンを電顕的に検討した(J.Histochem.Cytochem in press)。この方法により、TAMの培養細胞では、好塩期球顆粒と好酸球顆粒を合せわてもつhybrid cellが多いことがわかった。
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