研究概要 |
1.今回の研究は登校拒否症の治療と予後に重点をおいたので、まず、治療をして当科で使用している抗うつ剤の登校拒否症に対する治療効果を検討してみた。対象は当科に受診したときの治療が明らかで、かつ予後の判明している47例で、このうちamitriptyline,clomipramine,levomepromazine,sulpyrideなどの抗うつ剤使用群のうち、登校状況が改善したものは53%であった。一方、非使用群では60%が軽快しており、抗うつ剤が登校拒否に対して必ずしも有効とは言えない結果となった。しかし、コントロール・スタディではないので、実際に抗うつ剤を投与した症例は一般に投与しなかった症例よりも重症例が多く、有効率が低い結果となった可能性が否定できない。 2.登校拒否児へのChronotherapyとしての抗うつ剤の使用の裏付けとして、三環系抗うつ剤がサーカディアン・リズムに及ぼす影響をラットをつかった動物実験で検討中である。一つの方法として、ラットの明暗周期の位相をずらし、再同調するまでの早さでリズムへの影響を見ることが可能であるが、デジプラミン、イミプラミン、クロミプラミン投与群と、対照群では再同調率に差は見られなかった。 3.前回の研究で、登校拒否児では生体リズムの様々なパラメータで異常が見られることを指摘した。そこで今回はこれらの生体リズムの異常と予後との関連を検討した。その結果、尿量および尿中Na排泄量、夜間深部体温、心拍数では入院時の検査で異常が見られた群と正常であった群とで予後に差は見られなかった。また、β-エンドルフィンでは、入院検査後まもなくの予後調査では、日内変動の有無と予後との関連性が見られたが、今回調査をした長期予後では関連性が薄くなっていた。しかし、これらの結果も予後の判明している例数が十分でなく、確定的なことは言えなかった。
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