研究概要 |
生後間もなくから黄疽を起こすホモ接合体Gunnラット(j/j)と黄疽とならないヘテロ接合体ラット(j/t)を利用した. 先ずビリルビン(BR)合成系の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼの反応動力学的解析を行なった. 基質メトヘムアルブミンに対するkm値は12μMであり, これはラットの遺伝的条件や臓器の種類による差は無かった. 錫プロトポルフィリン(SnPP)は強い反応阻害作用を示し, そのki値は40nMであった. 生体内においてもSnPPは酵素の活性を阻害して血中BR値を低下させると期待されたので, 生後4ー5日のラット皮下に0.5〜100μmol/kgのSuPPを一回投与し, 生後30日に効果を判定した. j/jラットへ投与した場合, 生存率は無投与群20%に比べて1μmal/kg以上に投与群全てで有意に上昇し, 特に5μmol/kg投与群で92%の高率となった. 小脳重量の増加は1および5μmol/kg投与群で有意となった. しかしその効果はあまり高くなかった. j/tラットへSnPPを投与しても影響見られないことからSnPPの直接的な副作用の存在は否定される. 血中総BR値はSnPP投与後急速に低下することからSnPPによる遊離型BRの出現が考えられ, 現在検討中である. 治療法開発の基礎としてBRによる小脳発育障害発生機序について検討した. 小脳中葉にあるプルキン工細胞(PC)は後葉にあるPCよりBRによる影響を受け易い. 両小葉中のPCを組織学的に比べると中葉のPCはゴルジ装置に富み, 細胞質の等電点は低いことが示された. BRとの親和性を比べたところ, 中葉のPCは後葉のPCら比べてBRとの親和性が高いことが認められた. 又電気泳動的にも発育中の小脳に複数のBR結合性蛋白の存在が確認された. 小脳中葉のBRによる障害され易さは, PCとBRの親和性がより高いことが原因の一つと考えられた.
|