研究概要 |
1.ras遺伝子産物(rasP^<21>)の免疫組織学的検討 前年度研究において、乾癬患者病巣部表皮では、非病巣部、健常人正常皮膚に比して、rasP^<21>の発現が著しく高まっていることを確認した。今年度研究においてはrasP^<21>発現が乾癬病巣の成立過程、治癒過程でどのように変化するかを検討した。このために乾癬患者の早期病変と考えられる丘疹、また種々治療により平坦化した病変部を生検し、抗rasP^<21>単クローン抗体を用いて検索した。 結果は、1)丘疹病変でもrasP^<21>発現は高まっていた。2)治癒病変部ではrasP^<21>の発現は正常表皮と同様であった。このことからrasP^<21>発現は乾癬の病勢と深く関連することが判った。 2.mRNA levelでの癌遺伝子発現の検討 前年度研究において、乾癬病巣部ではfos,myc遺伝子発現の低下、K-ras遺伝子発現の増加、異常、並びにH、N-ras遺伝子、actin遺伝子、EGF-receptor遺伝子は変化がないことを確認した。今年度研究においてはこの異常が乾癬患者非病巣部でも認められるか否か昨年度と同様の方法で検討を加えた。 結果は、異常のみられたfos,myc,K-ras遺伝子いずれも、非病巣部皮膚は健常人正常皮膚と同じレベルの発現を示すことが判った。 以上の事柄から、癌遺伝子発現は乾癬の病勢と共に変化するため、表皮細胞増殖の一つのマーカーであることが推測される。しかしながら非病巣部における発現は正常人表皮のそれと変化がないことより、癌遺伝子に遺伝的異常はないことが想像された。
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