昭和62年度中に、正常日本人例の表皮メラノサイトの立体像の構築に一応成功し、その旨、昭和62年度の実績報告書で報告したが、昭和63年度においてその方法論に重大な欠点があることに気づいた。すなわち、ドーパ反応後、樹脂包埋した皮膚材料のトリイジンブルー染色切片を作製し、さらにその切片から超薄切片を作製し電顕的に観察したところ、光顕的にメラノサイトとみなした細胞の一部は他の間葉系細胞であることが判明し、それまで得られた画像解析データの信頼性が低下した。この誤認の理由は、ドーパ反応陽性所見が光顕での観察において不十分であるためと判明した。そこで、メラノサイトをより明瞭に染色して、十分にトルイジンブルー標本中で観察できるように、ドーパ・プレメラニン法を生検皮膚材料に応用した。これにより、ようやく正確なメラノサイトの同定と二次元像が得られるようになり、画像解析データの信頼性が高まった。この方法論について平成元年2月26日、日本皮膚科学回新潟痴呆会で発表した。しかし、すでに当初より準備、作製していたドーパ反応後の種々の皮膚材料が使用不可能となり、現時点では十分な症例数をもって、メラノサイトの人種差および悪性化について論じることができない状況である。今後新たな皮膚材料につき、今回報告した方法で本研究を遂行する予定である。今回の方法で得られたメラノサイトの立体像はその突起がより明瞭となり、立体計測ではメラノサイト体積457±36μm3基底総表皮ケラチノサイト体積405±40μm^3で有意の差を得た。このデータについては、日本皮膚科学会雑誌に投稿予定である。
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