1.アカゲザル(Rhesus monkey)胎児メラノサルトの動態 米国Oregon regional primate research centerにおける胎令の明確な胎児の身体各部皮膚を採取し、表皮・真皮のメラノサイト数をDOPA反応を施行し測定した。又同時に胎児臍帯血中テストステロン値を測定し、表皮メラノサイト数との相関を検討した。 その結果、(1)Postnatal rhesus macaquesの表皮にはメラノサイトが存在しないが、胎児表皮には豊富に存在していることを明らかにした。(2)DOPA陽性メラノサイトの分布は胎令により異なり、胎令80日まで増加し100〜200日の間に激減する。160日(満期)に近ずくと手掌を除いて表皮にはメラノサイトは認められなくなる。(3)電顕的に満期に近い胎児表皮に変性メラノサイトが観察され、その数の減少に係わっていることが示唆された。(4)臍帯血テストステロン値が急に減少する80日に表皮メラノサイト数が増すなど、両者間に相関がみられた。(5)胎児にDHT(dihydrotestosterone)をimplantすると、再び表皮にメラノサイトがその数を増した。 2.ヒト正常皮膚における真皮メラノサイトの存在について 成人仙骨部正常色皮膚においても分布密度がきわめて小さいが、真皮メラノサイトが存在することを組織学的に明らかにし、電顕的に確認した。また高齢者において後天的に上背部に色素斑が出現する症例を8例見出し、これが真皮メラノサイトによることを明らかにした。これらに該当する報告は未だない。今後、前項に述べたサルのメラノサイトと同様ホルモンによる動きを検討する必要がある。真皮メラノサイトがテストステロン・エストロゲンなどのレセプターを有しているか、今後明らかにする予定である。
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