昨年度の研究でT細胞の表皮向性遊走においてT細胞表面のcell adhesion moleculeの発現が重要であることが明らかになったため、本年度の研究では、その点を明らかにする研究を中心に行った。 1)種々のT細胞クローンの表面抗原をflow cytometryにて解析し、表皮向性遊走活性との相関を調べたところ全ての表皮向性クローンではLFA-1が強く発現されており、一部の例外を除きnon-epidermotropic cloneではLFA-1の発現はごく弱いか欠如していた。CD3、CD2、CD4、CD8、Mac-1などの発現は表皮向性と全く無関係だった。LFA-1^<low>cloneもPhorbol ester(PhE)とincubateすることによりLFA-1はup-regulateしたが、表皮向性の形質を獲得出来なかった。 2)表皮向性クローンを同系マウスに移入する事により誘発される遅延型過敏反応(DTH)及び苔癬様組機反応(LTR)に対する各種monoclonal antibody(mAb)投与の影響を調べた。抗IーA抗体はDTH反応のみを抑制したが、抗CD4、抗LFA-1抗体は、DTH、LTR両方の反応を抑制した。とくに抗LFA-1抗体は、T細胞の表皮内浸潤及び表皮破壊をより選択的に抑制した。(1)(2)の結果は、T細胞の表皮向性遊走には、細胞表面のLFA-1 moleculeの発現が大きな役割を果していることを示している。 3)表皮向性クローンの移入によるLTRは、recombinant IFN-γの前投与により著明に増強したがtumor necrosis factor α(TNFα)の前投与は特に影響を与えなかった。IFN-γの前投与によるLTRの増強効果には、IFN-γによるケラチノサイトのclass II抗原の発現誘導は本質的ではなかった。抗IFN-γ抗体投与によるLTRの発症の抑制は、認められたものの、IFN-γの増強効果に比べ、著明な抑制は認められなかった。IFN-γ前投与により表皮ケラチノサイトに発現されたLFA-1に対するligandが、LFA-1^+T細胞の表皮内遊走に大きな役割を果していると考えられた。
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