Boost治療として低線量率遠隔照射を試みた高度進行癌症例は今年度までに129例になった。その中で温熱との併用療法を行なったのは32例で内訳は食道癌16例、膵胆道癌8例、頭系頚部癌2例、大腸癌2例、子宮癌1例、多発性肝転移3例で、多発性肝転移以外はいずれも50〜60GYの通常照射法後に癌残存を認めた高度進行行列である。通常照射50GY後に低線量率遠隔照射法 (1時間1GY、1日4時間、週2〜3回) で24GY追加するのを原則とした。温熱療法は週1回低線量率遠隔照射直前に施行し、42.5^。C1時間加熱を目標とした。低線量率遠隔照射と温熱との併用療法による早期障害はやはり前年度までの症例と同様、低線量率遠隔照射単独例に比較し軽度であった。1日4GYの照射が良い様である。 (低線量率遠隔照射単独例1日7GYはoverdoseであったように思われる。) 全例高度進行癌であるが20例 (63%) に著明な腫瘍縮小を認めた。残りの例も腫瘍は残存するが経過中腫瘍の増大をみない例が多く、大部分が凝固壊死に陥っている可能性がある。現在まで20例が死亡、食道癌10例、膵胆道癌6例、大腸癌、頭頚部癌各1例、多発性肝転移2例で生存率期間は4〜36ヶ月で平均13ヶ月であった。残りの12例は2〜16ヶ月現在生存中である。1日7GYを照射した低線量率遠隔照射単独の症例では小腸〓孔等の晩期障害が認められたが、この併用療法では現在までのところ晩期障害は認められていない。概してこの1日4GYの低線量率遠隔照射と温熱との併用療法は障害も少なく、局所効果も良好と云える。乳癌の多発性肝転移例に対しての同治療を行ない著効を示した症例を昨年報告したが、剖検時の所見では肝内の転移巣は再増殖を示していなかった。同様の治療 (全肝に温熱+18GY (3GY×6) を食道癌の多発性肝転移例にも行なったが、乳癌の症例と同様に著名な縮小効果が得られている。本法はこのような多発性肝転移症例に対しても有用な治療法と考えられている。
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