研究概要 |
Boost治療として低線量率遠隔照射法を試みた高度進行癌は今年度で、138例となった。そのうち温熱療法との併用を行ったのは34例で、内訳は食道癌20例、膵胆道系癌7例、頭頚部癌2例、多発性肝転移2例、胃癌1例、直腸癌1例および子宮癌1例であった。多発性肝転移以外はいずれも50〜60Gyの通常分割照射後に癌残存を認めた高度進行例である。照射は通常照射50Gy後に低線量率遠隔照射法(1時間1Gy,1日4Gy,週2〜3回)で24Gy追加するのを原則とした。温熱療法は週1回低線量率遠隔照射直前にに施行し、42.5℃1時間加温を目標とした。本年度はBoost治療として低線量率遠隔照射単独治療を行った104例中脳腫瘍26例を除いた78例(食道癌46例、膵胆道系癌7例、頭頚部癌5例、大腸癌10例、その他10例)の治療成績と比較し、温熱療法併用の有用性について最終的に検討した。症例構成をみると食道癌では温熱療法内腔電極を挿入する必要があるため温熱療法併用群癌腫は内腔電極が挿入可能な大きさであることが必要で、またある程度全身状態が良好でなければならず、温熱療法群に多少有利な症例が偏っていた。局所効果をみく温熱療法併用群のCR率は18%(6/34)、非併用群のCR率は26%(20/78)で両群に差はなかった。食道癌、膵胆道系癌の局所制御率も両群でほぼ同じであった。両群とも治療を要する早期障害はなかったが、晩期障害は高度であった。温熱療法群の晩期障害発生率は12%(4/34)、非併用群の障害発生率は19%(15/78)で両群に大きな差はなかった。治療前転移( )例について経過中の転移出現率をみると温熱療法併用群で55%(11/20)、非併用群で34%(18/53)で、温熱療法併用群にやや高い傾向がみられた。また両群の生存率を癌腫別、病気別に検討したが差はみられなかった。難治性癌の治療成績向上を期待して低線量率遠隔照射法と温熱療法とを併用したが、併用の意義は高くないという結果であった。
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